ウィーンにいるヤンとペーターたち [ウィーン 2014 冬]
読むより観てみる。
・・・なんてカッコよさげに聞こえるけれど、
本当は、その場で解説読んでもよく分からないから、
自分の視点で楽しんでるのだった。
2014年12月に行ったオーストリア旅のお話。 ウィーンでの4日目の続き。
Kunsthistorisches Museum 美術史博物館で青カバとイタリア絵画を堪能した後、
今度は同じ階にあるオランダ、フランドル、ドイツ絵画のエリアへ。
上の写真の中での私の注目は、左の大きな絵。
Frans Snyders und Cornelis de Vos "Fischmarkt" 1620/1630
フランス・スナイデルス(1579-1657)とコルネリス・デ・フォス(1584-1651)の『魚市場』。
その中の、鮭の切り身が色鮮やかで、美味しそうで。 そばのイカはコウイカのよう。 新鮮そう。
コウイカの左へ視線をずらすと・・・
・・・魚の並ぶ台の下からアシカが。
フランドルの動物画家・生物画家のフランス・スナイデルスと肖像画家のコルネリス・デ・フォスが
それぞれの分野で合作。
オランダの画家 Hendrik Avercamp ヘンドリック・アーフェルカンプ(1585-1634)の絵。
"Winterlandscape" 1605年頃 『冬景色』。
この画家の冬の風景画は好きだ。 ひとりひとり、何してるのかを見るのが楽しくて。
上の絵でも、小屋で用を足してる人もいるのだった。 というより、お腹こわしてるよう・・・。
オランダの画家で有名な人といえば・・・
・・・Johannes Vermeer ヨハネス・フェルメール(1632-1675)。
この美術史博物館では、Jan Vermeer ヤン・フェルメールとなっていた。
"The Art of Painting" 1665/1666 『絵画芸術』
黄色いスカートに青いローブをまとい、トランペットに分厚い本を持つモデルの女性。
その青い月桂冠部分をキャンバスに描いている画家。 足元は、チラリと見える赤いソックス。
オランダの画家 Gerrit Dou ヘリット・ダウ(1613-1675)の "The Doctor" 1653 『医者』
フラスコに入っているのは、患者の尿。 それを調べてるところらしい。
小さな絵だけれど、立てかけられた医学書がすごく精密に描かれてる。
ヘリット・ダウは、レンブラントの元で学んだ門弟。 私はレンブラントの絵より好き。
そして、この日、印象的だった絵が・・・
・・・オランダの画家 Jan Lievens ヤン・リーフェンス(1607-1674)の描いたもの。
"The Old Man" 1625/26頃 『老いた男』 抑えた色の明暗でソフトな感じ。
知らない画家だったけれど、Wikipediaによると、
レンブラントと共同で工房を構え、共作もし、そして競い合った仲らしい。
どうも私は、有名なレンブラントよりも、その周りで活躍してる画家の方が好みみたい・・・。
フランドル画家 Jan Brueghel the Elder ヤン・ブリューゲル (父)の絵。
"Animal Studies(Donkey, Cats, Monkeys) " 1616頃 『動物の習作(ロバ、猫、猿)』
鼻先の白いロバに目が止まって、その愛らしさにやられた。
しかし、ブリューゲルは難しい。 何が?というと人物関係。 皆、画家なんだもの。
美術史博物館にある『バベルの塔』を描いたピーテル・ブリューゲル(父)、その息子たちは、
長男がピーテル・ブリューゲル(子)で、次男がこの絵を描いたヤン・ブリューゲル(父)。
そのヤン・ブリューゲル (父)の息子も画家で、ヤン・ブリューゲル (子)。
長男には父親と同じ名前をつけるのが当時の慣わしか何かだったのかしら・・・。
いったいどのブリューゲルだったのか、やっと分かった。
この絵のヤン・ブリューゲル(父)は、花輪の中に人物像を描いた絵を何度か見たことがある画家だった。
そして、ピーテルといえば・・・
・・・フランドルの画家 Peter Paul Rubens ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)。
''The Holy Family Beneath an Apple Tree" 1630/32 『林檎の木の下の聖家族』。
ささっと絵の前をKamoさんが通り過ぎて次の間へと行こうとするので、待って、待ってと呼び止めた。
ルーベンスと気づいてなかったよう・・・。
同じく、ルーベンスの"The Calydonian Boar Hunt" 1617/1628? 『カリュドンの猪狩り』
ギリシア神話に登場する猪らしい。
カリュドンという地の王が収穫祭で狩猟の神アルテミスへ生贄を捧げるのを忘れてしまった。
で、怒ったアルテミスが罰として獰猛な猪を放ち、家畜や人、農作物に被害が出たため、
ギリシア全土から集まった勇士が退治に取り掛かった・・・ということみたい。
フランドル画家 Jan Wildens ヤン・ヴィルデンス(1586-1563)が風景を、
記事の最初に登場した鮭の切り身のFrans Snyders フランス・スナイデルスが動物を、
Van Dyck ファン・ダイク(1599-1641)が絵画の四辺の風景画を延長して描いた・・・と解説に。
確かに、写真でも絵画の上部に妙な線が入ってるのが見える。
ということは、残る人物をルーベンスが描いたってことかな。
ルーベンスの"The Feast of Venus" 1636/37 『ヴィーナスの饗宴』
みんな楽しげ。 むっちむちな天使がまた、いろんな表情してて、面白いのだった。
広い部屋に、ルーベンスの絵画がたくさん並ぶ。
右の大きい絵は、"The Miracles of St.Francis Xavier" 1617/18頃
『聖フランシスコ・ザビエルの奇跡』
1549年、日本にキリスト教を初めて伝えた、あのザビエル(1506-1552)だ。
それをルーベンスが描いてるのって、なんか不思議な感じ。
この絵で、ふと目に付いたのが、中央左部分の・・・
・・・モヒカン刈りの男の人。 この時代に、もうあったんだ。
ルーベンスの"The Four Rivers of Paradise" 1615頃 『楽園の4つの川』?
エデンの園から流れ出る4つの支流という説。
『4大陸』ともいわれてるようで、
左端にいる女性がヨーロッパ、おじさまがドナウ川の神、
その手前に黒人女性のアフリカの体に手を回してるナイル川の神、
右には、アジアと青い腰布のガンジス川の神、
奥にアメリカ大陸とラ・プラタ川の神・・・という解釈もあるそうな。
そんな深い話も知らずに、パッと見で気になったのが、このあたり。
手前にいる人の、三つ編みをトップの髪とともにまとめた髪型とか、 ← ウンパルンパっぽい。
耳をぺしゃんこにしながらも剥き歯の母トラの鼻のシワとか。
だいたい一周して、階段を降りる際に観たのが、壁画。 (撮ったのをトリミング)
アーチの曲線の両側、そしてその隣の柱と柱の間、そこにある壁画も有名な画家の作品。
オーストリアの画家 Gustav Klimt グスタフ・クリムト(1862-1918)が描いたものだとか。
例えば、写真中央。
赤い服をまとったのが古代ギリシア美術の女神、アーチを挟んでその右が古代エジプト美術の女神。
そんなこんなで、駆け抜けるように観たウィーンの美術史博物館。
ベラスケス展もしていたけれど、スペインで見たからパス。
ショップも見て出てきたら、すっかり外は暗くなっていた。 閉館20分前の17:40頃。
さて、今晩は何食べよう・・・と、冷えた空気の中を歩き出した。
普段の暮らしでの興味とか、TVで見た映像とか、読んでる本とか、
その時その時でいろんな影響を受けているから、
今度ここに来ることがあっても、きっと気になる絵はまた異なるはず。
それも何年後かの楽しみにしておこうかな。
こんなラフな絵の見方もありってことで^^;
親子で同じ名前って、ややこしい^^
それでなくても、ヤンさんって多いし・・・♪
by mitu (2015-12-05 08:40)
Inatimyさんの美術館探訪記事に刺激を受けて、
行ってみよういってみようと思いながらまた行かないままに1年が^^;。
Inatimyさんらしい細部にこだわった観賞に私も行った気分になってます♪。
それにしても鮭の切り身、おいしそうですねw。
ブリューゲルさんシリーズ(!?)、私もおてあげです^^;。
by ハリネズミ (2015-12-05 08:47)
海の幸の絵は迫力ありますよねぇ。
見ていたら、鮭のムニエルなど食べたくなってきました♪
この形の切り身は大きくて、食べごたえありますよね。
by めぎ (2015-12-05 16:12)
私も、2005年にウィーンの美術史博物館に行っていますが、その時の撮影した写真を見ていたら、私も、『カリュドンの猪狩り』、『ヴィーナスの饗宴』、『楽園の4つの川』などを撮影していました。
その時は、ニコンD70S を使用していましたが、改めて、いいカメラだったような気がします。シャッター速度1/8 とか1/10 で、撮影していました。
by テリー (2015-12-05 18:31)
オランダ、フランドルの絵画も素晴らしい作品が多いですよね。
特に民衆の姿を描いた絵が好きです。
アーフェルカンプのポスター、初めて行った時に買って帰りました。
ブリューゲルもルーベンスも大好きな画家です。
ルーベンスの作品は大きい物が多いので見ていると首が痛くなるんですよね^^;
by miffy (2015-12-05 20:17)
アシカも食べてたんですかね?
ちょっと不思議
by (。・_・。)2k (2015-12-05 21:04)
魚市場の絵は…美味しそうです♪ 笑
by だいず (2015-12-05 21:43)
書き込まれた絵画を隅々まで見ると、オモシロイですね~。
そして、本当に奥深さ感じます。
by momo (2015-12-06 08:49)
inatimyさんの、絵を見る視線が楽しい
あっそこなんだとかね、
解説が、とっても新鮮、、
ブリューゲルは、好きな画家の一人です、、
by engrid (2015-12-06 23:06)
お魚の絵、生々しくて面白いですね
こういう絵は日本では中々見られないので新鮮です
by shino* (2015-12-07 01:14)
→皆さま「ウィーンにいるヤンとペーターたち」のお話にnice!やコメントをありがとうございました。Jan ヤンは英語のジョン、スペイン語のフアンらしく、確かに他の国でも多そう^^;。ペーターといえば、まず思い浮かぶのは、アルプスの少女ハイジかなぁ。
→mituさま
親子で同じ名前って、本当にややこしいですよね。母親が怒った時に名前読んだら、父親も怒られてるように感じるのかもしれないなぁ・・・なんてね^^。
→ハリネズミさま
有名な絵だとあちこちの展覧会で見ることがあるから、あまり名前の知られてない画家さんのもここだけでしか見られないかもと捨てがたく^^;。音声ガイド借りても見ると聞く、一度に両方できなくて、好き勝手な見方・・・。ブリューゲルさん、いつもどの人だっけ・・・と調べてます。すぐに忘れちゃうし^^;。
→めぎさま
私もこの鮭の切り身見た時にムニエルがいいな、と^^。鮭もこれだけ大きいと価格がすごいでしょうね〜。しかも新鮮だし。昨夜は燻製のサーモンの切り身でした♪
→テリーさま
フランドルの画家なのに、オランダやベルギーでなく遠く離れたウィーンにこんなにもたくさんルーベンスの絵画が。これは見ておかないと、と^^。私のカメラはSONYのコンデジDSC-RX100初期ので、いつもオートでおまかせで撮ってます^^;。暗いところでも絵が簡単に綺麗に撮れるというので買ったもの♪
→miffyさま
オランダ、フランドルの絵画、遠く離れたウィーンにたくさんあるのも面白いですよね。アーフェルカンプ、似たような冬の風景画が多いけど、それでも微妙に異なってて。ルーベンスは大きな絵が本当に多く・・・見るにも大変。近寄ると上の方が見えないし、角度によっては照明は反射するし^^;。
→(。・_・。)2kさま
アシカも食べてたのかも^^。日本でも北海道あたりに行くと、アザラシやトドの缶詰が売ってましたよ〜。この絵のも、アシカって書いたけど、アザラシ、トド、オットセイ、その区別、私はよく分かってなくて^^;。
→だいずさま
魚市場の上には肉市場の絵もありました^^。何食べてるんだろう、市場や食卓のある絵は気になりますよね♪
→momoさま
自分が興味のある分野の絵だと、なおさら面白くって。私の場合は、「食」に関する絵♪ あと動物かな^^。
→engridさま
図録や解説にある見所以外に、難しいことは抜きにして自分なりの好きな部分があってもいいんじゃないかしらと^^。ブリューゲルも皆それぞれ、いい絵がありますよね。美術館で一番よく見かけるのはピーテル・ブリューゲル(父)かしら♪
→shino*さま
魚市場、カメラのズームを双眼鏡がわりにして、魚、眺めました^^。なんじゃ、こりゃ?みたいな魚までいて。昔の人、皆、結構魚食べてたんだなぁと。その絵の上には肉市場♪
by Inatimy (2015-12-07 20:35)