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拾って積んでとハーグ派 [ミュージアム]

に並んだ椅子、ズラリ。

陽の光があれば、心地いいだろうなぁ。

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そんながあるのは、ミュージアムDe Mesdag Collectie デ・メスダハ・コレクシー

オランダの画家 Hendrik Willem Mesdag ヘンドリック・ウィレム・メスダフ(1831-1915)は
美術品収集家でもあり、自宅の庭にコレクション美術館を作っていたほど。 

のち、寄贈されたその美術館邸宅が現在のミュージアムになったらしい。

10月中旬、アムステルダムの南西にある、北海に面した街、Den Haag デン・ハーグに行った際、
所用をさっさと済ませて、そのミュージアムに立ち寄った。

ちょうど開催されていた企画展が・・・

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"Jean-François Millet en de Haagse School"「ジャン=フランソワ・ミレーとハーグ派」
2019年9月13日から2020年1月5日まで。 ミレー(1814-1875)はバルビゾン派フランスの画家。

上のエッチング"Drie vrouwen lezen aren op een akker" 1855
訳すと「3人の女性が耕地で落ち穂を拾い集めている」。 アムステルダム国立ミュージアム所蔵

普段「読む」という意味で使っているLezen レーゼン
「(落ち穂などを)拾い集める、摘む」という意味があったなんて知らなかった。

このエッチングと同じシーンの油彩画「落ち穂拾い」1857 は、パリオルセー美術館が所蔵している。
2011年1月にジェロームの展覧会を観た後、常設展で初めて対面。

ミレーのその絵は父が教えてくれた。 幼い頃からずっとその絵が部屋にあった。 
ポストカードか雑誌の切り抜きか分からないけれど、額に入れて欄間に掛けられていたのだ。



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ミレー"De Toren van Chailly bij Barbizon" 1873  デ・メスダハ・コレクシー所蔵
「バルビゾン近くのシャイイの塔」。 シャイイは、フランスのバルビゾンの北にあった地。

この油絵は未完成で、黒い下書きがまだ見えてる状態。
メスダハは、制作過程を見られるからと、このような未完成の作品を好んで買っていたみたい。



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ミレー"Stilleven"「静物画」1860-1865頃  デ・メスダハ・コレクシー所蔵

甕だか壺だかの上にはポロネギ、左下に転がってるのは根菜のルタバガだと思う。

オランダ語でルタバガは、Koolraap コールラープ。 直訳は、キャベツカブ
生でかじってみるとキャベツの味で、芯の硬い部分をかじってるかのような歯ごたえ。

煮て食べてみると、まさにキャベツカブのミックス。
大根辛さの匂いが、かすかに鼻に抜けるという。



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ミレー"De Hooibergen"「干草の山」1867-1868  デ・メスダハ・コレクシー所蔵
パステルチョークで描いてある。

干し草の山、というより積みわらかな、その前にいる人の姿からすると、かなりの高さがある。 

フランスの画家モネの絵に積みわらのシリーズがあるけれど、そんなに大きな印象でなかったから、
ミレーのは誇張しすぎでは?と思ったけど、一般に積みわらって3mから6mほどのものもあるよう。

ちなみに、この油彩画バージョン("Haystacks:Autumn"「秋、積みわら」1874年頃)、
それは米国のマンハッタンにあるメトロポリタン美術館が所蔵してる。


ここからはハーグ派オランダの画家たちの作品。

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ハーグ派は1860〜1900年のデン・ハーグでの芸術運動で、現実的な表現を目指したそう。
フランスバルビゾン派に影響を受けている。

で、そのバルビゾン派っていうのは、1830〜1870年のフランスバルビゾン村辺りの芸術の一派で
現実を理想化することなくありのままに捉え、自然主義的な風景画や農民画を描いていた。


※ 追記:Komeさんが目がいってしまうとコメントくださったこの絨毯
    デザインはTheo Colenbrander テオ・コレンブランダー(1841-1930)によるもの。
    オランダの建築家、陶芸家、製本デザイナー、工業デザイナー。



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Jozef Israëls ヨーゼフ・イスラエルス(1824-1911)の作品、
"Hun dagelijks brood"「彼らの日々の糧」1864 

英語でのタイトルは"The shepherd's prayer"「羊飼いの祈り」
祈る男性の膝には紙に包んだサンド、その横で女性はカップに飲み物を注いでいるところ。



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Anton Mauve アントン・マウフェ(1838-1888)の透明水彩画で、
"Heide bij Laren"「ラーレン近くのヒース」1885-1887頃 ファン・ゴッホ・ミュージアム所蔵

ラーレンはアムステルダムの南東にある街。
ヒースとは、エリカ属の植物が生えてるような平坦な荒地。

マウフェの奥さんは、画家ゴッホの従姉妹。 彼はゴッホに絵画レッスンをしたこともあるらしい。


ちなみにヨーゼフ・イスラエルスアントン・マウフェの他の絵画を
アムステルダム国立ミュージアムで観たことがある。

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上:ヨーゼフ・イスラエルス"Kinderen der Zee"「海で遊ぶ子供」1872
下:アントン・マウフェ"Morgenrit langs het strand"「浜辺の朝の乗馬」1876

どちらも当時は単にパッと見で気に入って撮ってて、画家のことまで気にしてなかったという・・・。


話は戻って・・・

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Willem Roelofs ウィレム・ルーロフス(1822-1897)の
"De regenboog"「虹」1875  デン・ハーグ美術館所蔵

暗く重たい空の色に虹。 中央の暗い部分、ぬかるんだ道に牛が数頭いる。 明暗がすごくリアル。

この絵の描かれた数年前にミレー"Spring"「春」という絵を描いていて、それに構図が似てるよう。
ただし、ルーロフスミレーのその絵画を見たことがあるかどうかは定かではない、と解説に。

ルーロフスは、メスダハに絵画を教えていた師でもある。



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最後にミレー"Aan het einde van het dorp Gruchy"「グリュシーの村はずれ」1854
クレラー=ミュラー美術館所蔵。

これとよく似た作品、1866年に描かれたものがあって、ボストン美術館が所蔵してるよう。

そっちは空にカモメが飛んでいたり、右側の石のあたりに切ったが積まれていたり、
その向こうの水鳥の様子が違っていたりして、全体的にこれよりもう少し細かく書き込まれた感じ。

オランダミュージアムって、意外と有名作品の別バージョンを持ってたりするんだな、と
気づいた企画展だった。


☆ ☆ ☆


オランダのTV番組"Het Perfecte Plaatje"(意味は、完璧な画像)を毎回見てる。
キャノン提供で、有名人・芸能人8人が出される課題に取り組みデジカメで競い合う1時間弱の番組。

課題を制限時間内にこなして編集作業し1枚提出、プロの審査員が判定し、ランク付け。
それが次の課題の物を選んだりの優先順位にもなる。で、同様に課題をこなし、その作品の審査

2回分の課題の点数の平均でその放送回の成績が決まって、最下位は脱落していくという。

先日の放送回の課題の一つが画家レンブラントの光で、昔の衣装を身につけ自分を撮るもの。
 ※ 見られるかどうかわからないけど、その作品のリンク

画家の描いた肖像画、また風景画のような雰囲気カメラで再現するのは面白そうだなと感じた。



美術館の話、あと数回あるので、たまに挟んでいきますね^^。

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コメント 22

ma2ma2

ミレーの落ち穂拾いは日本に来たとき見たことあります。
階級の低い農民の作業を描いたみたいですね。
by ma2ma2 (2019-11-15 18:30) 

Boss365

こんにちは。
バルビゾン派のミレー作品良いですね。
「種まく人」や「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」を山梨県立美術館で鑑賞!!
現在「種をまく人」ゴッホ美術館に貸し出されていますね?
「干草の山」構図が新鮮で、干し草の存在感に圧倒される感じです。
「画家レンブラントの光」観れました!!
眼の表情が不思議な感じです!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2019-11-15 19:12) 

kome

なぜか、じゅうたんに目がいってしまいました。
by kome (2019-11-15 20:37) 

まいやん

座っても良い椅子なのかな~?
ぽかぽか陽気の日に座ったら
時間を忘れて 居眠りしちゃいそう(笑)
by まいやん (2019-11-15 20:59) 

斗夢

近年、東京での企画展には行かなくなりました。
兎に角、混むんです、並ばないと入場できないんです。
by 斗夢 (2019-11-15 21:19) 

ゆうみ

長椅子に座って じっくりと絵画を見たいです。
それと 絨毯も素敵です。
by ゆうみ (2019-11-15 22:31) 

みち

ゆったりのんびり観れる美術館いいなぁ。
長閑な風景画が多いですね。
未完成の絵を好んで購入するのって面白いです。
by みち (2019-11-15 22:48) 

kyon

あの椅子、絶対寝ちゃう!
「虹」という風景画好きです。まるで写真のよう。
by kyon (2019-11-16 07:00) 

YAP

絵画は詳しくないですが、この時代の絵はけっこう好きです。
by YAP (2019-11-16 07:01) 

めぎ

リンク先、見てみました!
面白いですね~どれもすごい!!最下位も素晴らしくてもったいな~い!
面白い番組やっているんですね~うちはテレビあるのに全然見てなくて勿体ないかも。

by めぎ (2019-11-16 07:01) 

テリー

この時代の絵は、好きですね。
絵を、丁寧に撮影されていますね。
今、6月に行ったアメリカ東部旅行の内、ワシントンDCのナショナル・ギャラリーの絵を、纏めていますが、広角レンズで、撮影したせいか、変形が大きいと反省中。

by テリー (2019-11-16 08:12) 

(。・_・。)2k

リンク先の最後の鳥
本物ですかね?

by (。・_・。)2k (2019-11-16 13:31) 

いろは

こんにちは^^
「落穂拾い」「種まく人」は観た事があります。
ミレーの「干草の山」はパステルとチョークで描かれたのですね。観て見たいです。
日本で絵画鑑賞となると、混んで大変です。
一昨日、上野に「正倉院展」を観に行きましたら、券を買うのに20分、入場するのに90分待ちました。
中に入ると人、人で、背の低い私はよく見えませんでした。でも観たいものはしっかり観て来ました^^
by いろは (2019-11-16 16:27) 

竹口要の妻

絵にも歴史にも全く詳しくないのですが、ものすごく惹かれます。
色調もタッチも優しくて、影やグラデーションも、実物を時間掛けてじっくり見てみたいです。
我が家も来年、あるデンマークの画家の絵に合わせた企画展に器を出すことになっています。Inatimyさんならきっとご存知の画家なのだろうな~(私はオファーを頂いて初めて知りました( ;∀;))。
by 竹口要の妻 (2019-11-16 17:37) 

ぴーすけ君

この時代のせいかつと景色を目で楽しめるのは
いですね〜♪
by ぴーすけ君 (2019-11-16 18:10) 

JUNKO

オランダの美術館は充実していますね。
by JUNKO (2019-11-16 19:19) 

miffy

庭に並んだ椅子、クッションがあればいいな~って思っちゃいました。
マウフェの水彩画、好きです。
リンク先見てきました。
1位よりも2位と3位の作品が好きだな~
by miffy (2019-11-16 20:16) 

engrid

並んだ椅子で休みながら、ゆっくり、
めぐりながら、また休んで、、そんなふうに過ごせたらいいな、、
心落ち着く絵画を鑑賞し反芻しながら、、いいな
by engrid (2019-11-17 01:27) 

kuwachan

写真だからかもしれませんが私も絨毯がすごく気になりました。
美術館だったら絵の方に目が行き、絨毯は目に入らなかったかもしれません。

by kuwachan (2019-11-18 00:55) 

TaekoLovesParis

ミレー、日本で見る絵は「種まく人」「落穂ひろい」「晩鐘」のように暗い画面のものが多いのだけど、外国の美術館に行くと、ここに、あるように、青空にぽっかり綿雲という明るい絵がいくつもあるので、ミレーを再認識しました。「乾草の山」いいですね。
ヨーゼフ・イスラエル、初めてきく名前だけど、(宗教的で覚えやすい名前)「海で遊ぶ子供」いい絵ですね。
by TaekoLovesParis (2019-11-19 00:56) 

marimo

リンク先は一瞬何か絵画を映し出したのですが
下記の文字が出て
Door deze content te bekijken ga je akkoord met het privacy statement van RTL
その下にある ja,ik ga akkoord という青いボタンをクリックしたら見れました。
有名作品の別バージョン!画家は一つのテーマで何枚か絵を残すものなのですね。



by marimo (2019-11-19 15:23) 

Inatimy

→皆さま「拾って積んでとハーグ派」のお話にnice!やコメントをありがとうございました。カメラがなかった、もしくは一般的ではなかった時代、描くことがその代わりで、その画家たちがどんなふうに物事を見て、どこに着目して、どんな世界を残してきたのか、写真を見るときのようにすごく面白く感じます^^。

→ma2ma2さま
ミレーの落ち穂拾いは有名ですものね^^。日本にも何度かきたんでしょうね。ミレー、他にもいい絵をたくさん残してます♪

→Boss365さま
そうか、「種を蒔く人」は今、ゴッホ美術館に貸し出されてるんですね^^。確か、ゴッホってミレーの絵を模写したりしてたんでしたっけね。干し草って、こんなにも高く山積みにされるものなのかと驚きました。誇張してたんじゃないんだ^^;。画家レンブラントの光のリンク、見られてよかった。

→komeさま
絨毯に着目してくださって嬉しいです^^。私もここの絨毯が気になって、撮ってたのでした。追記で誰のデザインか書いておきました♪

→まいやんさま
座ってもいい椅子だと思います^^。でもこの日、激しい雨が降ったり止んだりで。天気が良ければ心地よく眠れそう♪

→斗夢さま
日本は絵画への注目がすごいですよね。しかも海外から良い絵がたくさん来るし。オランダの企画展は大きなものから小さなものまでいろいろで、このミレーのは小さい部類に入るのかも。空いてました。展示されてる絵も、オランダ国内からのがほとんどだし^^。

→ゆうみさま
長椅子、この日は雨が降ったり止んだりで、庭に出るの、忘れてました^^。絨毯も見事なデザインですよね。工業デザインの先駆けの人だったのでした。

→みちさま
オランダにはかなりの数のミュージアムがあって、ちょこちょこ、小さな企画展があるので楽しめます^^。未完成の絵画を好んで購入する、収集家でもあり、画家でもあったメスダハらしいです♪

→kyonさま
長椅子、天気の良い日だったら、すごく心地よさげですよね^^。「虹」この明暗のリアルさがすごく気に入ってます。オランダ、本当にこんな空の日があるんですよ。

→YAPさま
私も絵画には詳しくないので、有名無名関係なく気に入った絵を並べていたり^^;。新たに知ることもいっぱいです。

→めぎさま
リンク先、見られてよかった〜。キャノンからデジカメ3台ほど支給されて、課題によって使い分けてるみたいです。課題を発表された後に、その分野を得意とするカメラマンからのちょっとしたヒントなんかを伝授されたり^^。我が家はTVよく見てます、聞き取りの練習で^^;。いまだにオランダ語、だめなんですよ。

→テリーさま
暗いところでも絵画をキレイに撮りたいとSONYのRX100を最初に選んで買ったので^^。レンズのこともよくわからない私にはちょうど良いコンデジです♪

→(。・_・。)2kさま
リンク先の最後の鳥は本物じゃなく、作り物のようですよ^^。本物っぽく見えますよね。

→いろはさま
オランダには大小さまざまな企画展や展覧会がいろいろあるので、ミレーのは比較的小さな方だったと思います。なので楽々^^。でもレンブラントなど注目が大きい画家のは整理券が発行されて、2時間、他のミュージアムで時間つぶししましたよ^^;。まだ整理券を発行してくれるだけマシですよね。90分並んで待つのは辛いです・・・。

→竹口要さまのツマさま
私も絵画も歴史もよくわからず、ただ気に入ったものを撮ってきてます^^。だから食べ物とか動物が描かれてるのを紹介することが多いかも。デンマークの画家さん、はて、どんな方だろう。要さん、すごいですね〜♪

→ぴーすけ君さま
知らない世界、時代を絵画を通して意識したり見たりするのは、面白いですよね^^。こんなの食べてたんだとか、こんな暮らし方だったんだ、とか♪

→JUNKOさま
オランダの美術館、日本でガイドブックに載ってないところも多くて、国土の割にはミュージアムが充実してます♪ カメラがなかった時代、描くことがその代わりだったと思うと、その画家の視点、フレーム内に入れるこだわりの範囲とか面白く感じます。

→miffyさま
この日は雨が降ったり止んだりで、庭でゆっくりできる状態じゃなかったのが残念^^;。写真は審査する人の好みも出ますよね。私も1位より2位の方が好み。

→engridさま
もっといいお天気だったらよかったんですけどねぇ・・・突然激しい雨が降ったり止んだりでコロコロ変わる空なのでした^^;。庭の椅子は展示室の窓から眺めただけに。

→kuwachanさま
絨毯、私も気になって、残しておきたいと写真を撮ったので^^。目を惹くデザインですよね。部屋に入る時、踏んでもいいのかなぁ・・・なんて最初思ったほど。

→TaekoLovesParisさま
ミレーって農民の姿や作業の風景ばかりと思ってたので、この静物画はとてもインパクトありました^^。ネギの存在感すごくて。干草の山も、色のトーンが好みで。ヨーゼフ・イスラエルはオランダのミレーともいわれるそうです。このコレクションの持ち主だった画家メスダハの親友でもあり。

→marimoさま
写真、見られてよかったです^^。この番組で最後に残った優勝者は、ナショナルジオグラフィックの表紙の写真を撮れるそうなので、誰が勝つか楽しみ。作品の別バージョン、どこがどう違うのか、間違い探し的に見比べるのも楽しく♪
by Inatimy (2019-11-24 08:23) 

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