洗濯日和な空の下 [ミュージアム]
バス停から歩いた親戚の家。
覚えているのは、猫じゃらしの続く道と、
家の前にあったローラー絞り機付きの洗濯機。
5月初旬、列車で北上して訪れた街、Enkhuizen エンクハウゼンにある、
Zuiderzeemuseum ザウダーゼーミュージアムでのお話。 仕事場編の第4弾。
ここは、薬局や焼き菓子屋さんと同じ、Stadsgracht スタッツフラハト・・・都市運河のエリア。
写真の右手側に洗濯作業場の建物がある。
奥の青い扉の建物は、19世紀の洗濯乾燥小屋。 洗った後の濡れた洗濯物を乾燥させる場所。
当時は、上の階と下の階、板にかけた洗濯物が所狭しと吊るされ、並べられたそうな。
乾燥小屋の壁が格子状で隙間があいてるため、そこを風が吹き抜け、洗濯物が早く乾いたよう。
のちに、乾燥小屋は、荷車の保管スペースに。
そこには、また薪や泥炭、そして石炭もまた保管されていた・・・と解説板に。
もともと、これらの建物があったのは、Ijsselmuiden アイセルマウデン。
Kampen カンペンという街の近くにある村。
アイセル川からきれいな水を調達できるので、16世紀からすでにもう洗濯屋さんが幾つかあったという。
その村で、洗濯屋さんをしていたのが、Van der Kamp ファン・デア・カンプ一家。
有名な洗濯屋さんだったそうで、富裕層の顧客も多かったらしい。
1865年に父親から洗濯屋を譲り受けたのが、
Peter Jan van der Kamp ペーター・ヤン・ファン・デア・カンプ。
洗濯作業場の建物の中では、大きなドラム式洗濯機が本当に回っていた。
一つは洗い用、もう一つはすすぎ用かな。 そしてローラー式の脱水機。
右奥の樽みたいなのも稼働中で、オシャレ着やウールもの専用の洗濯機。
左壁の天井際にシャフトが通ってて、ギアボックスと皮革ベルトで洗濯機などを回してる。
奥の壁の向こうがボイラー室。
ペーター・ヤンが洗濯屋を継いだ1865年、彼は手作業の洗濯から馬の力に切り替えた。
馬が歩いて主軸を回転させることで得られるパワーで洗濯機を回したとか、なんとか。
その後、動力は燃料を石炭とする蒸気に。
これは、洗濯作業場の建物の屋根裏。
スチームエンジンは、洗濯機を回すだけでなく、
パイプを通る蒸気の熱で、洗濯物を早く乾かし、
屋根裏を乾燥小屋よりも効率の良い乾燥スペースにした。
だから、乾燥小屋はのちに荷車や燃料などの保管場所になったのだ。
洗濯石鹸、洗濯のり、漂白剤などのパッケージも、オシャレだな。
畳まれた洗濯物と、木製の洗濯バサミ。 バネを使ってない先駆けのもの。
L字に配置された乾燥小屋と洗濯作業場の建物の前には、今では、自動車が止められていた。
乾燥小屋の中に保管されてた荷車は、洗濯屋と駅、または直接、顧客との間の洗濯物の運搬に使用。
近所で誰かがが亡くなると、ペーター・ヤンは、いつも荷車とそれを引く馬を貸し出したらしい。
棺桶を墓地まで運ぶためだったそうな。
それは父から息子へと受け継がれた近所付き合いの約束みたいなものだったよう。
他、馬が引く荷車は、年に2回、親戚を訪ねるときにも使われたんだとか。
手洗いは、量が多いと大変だよね。 全自動洗濯機って、本当にありがたい存在だなぁ。
そうそう、オランダの家の洗濯機や食器洗い機の排水穴は、床にはない。
いや、正確に言うと、床には穴があるのだけれど、そこからビニールパイプが伸びていて、
床上80cm〜1mくらいのところにあるそのパイプの口に、洗濯機からの排水ホースを差し込んである。
しかもその排水ホースも日本のに比べると細め。
流れにくそう・・・と思うも、何かしら理由があるんだろうね。
でも、聞いてもきっと分からないのかも。
私も、日本ではどうして床に直接排水ホースを繋げてるの?と聞かれても、
そういうもんだし・・・としか答えられない^^;。
昔、母が話してくれた砧(きぬた)や籡張(しんしばり)を、ふと思い出した。
日本の洗濯の歴史も面白そうだ。
2016-10-04 19:00
nice!(45)
コメント(12)
アンティークの木製の洗濯バサミも持ってます^^。
手洗いでの洗濯って本当にタイヘン!
ずいぶん前に洗濯機が故障して修理に来てくれるまでの1日だけ、
手洗いでしのいだことがあるけれど・・・・
きちんと濯いだつもりでも洗剤が残ってたみたいでごわつくし、
手で絞っただけの洗濯物は乾くまでに時間がかかってほんと、イライラ^^;。
洗濯機、毎日の生活でいちばんなくては困る家電かも。
by ハリネズミ (2016-10-05 08:49)
ずいぶん昔からある商売なんですね
ちょっと驚きました
by (。・_・。)2k (2016-10-05 10:41)
時代を感じる生活用品など。
今の時代にも、素敵なディスプレイになりますね^^
ドラム缶式洗濯機、まだ使えるのにも驚きです。
木製の洗濯バサミも、珍しいですね。
その当時のことが偲ばれます^^
by アールグレイ (2016-10-05 11:07)
洗濯機が家に来る前の母の手は、絆創膏だらけ
手荒れのためのクリームも、当時は「桃の花」とかワセリンに色がついたようなものしかなかったから・・・
今時は、電気を使わない暮らし体験をして、冷蔵庫や、洗濯機、掃除機などを使わない生活を実践する、若い世代の存在も見聞きします。
石鹸を使っていた頃、排水による汚染も少なかったのでしょうね。
by mitu (2016-10-05 11:12)
フランスの田舎に行くと こんな雰囲気の小屋の景色があって
それを思い出しました♪
by ぴーすけ君 (2016-10-05 12:31)
洗濯って 手仕事となると重労働ですよね。
洗濯機って ありがたい…。(*´Д`*)
by だいず (2016-10-05 20:07)
昔の人は凄かったんだな~などと思いますが、ほんの少し前まではずっと手で洗っていたのですよね。
そういえば、こちらの洗濯機って、というか、洗濯機置き場って、ホースを差し込む場所が確かに床じゃないですね。食洗機と同じようなイメージ&原理なのかしら・・・よく、キッチンに洗濯機があるお宅も見かけますし。
by めぎ (2016-10-06 05:41)
見た目はねぇーーーー!!!
やっぱりステキだなぁーって思ってしまいますよー、何もかも!!
そう、見ているのは楽しいデス♡(使うのは・・・)
このドラム式の洗濯とすすぎ、汚れ落ちは良さそう!(←勝手に)
我が家、縦型全自動なんですが洗浄も脱水も、
二層式の方が断然良かったなぁーって感じてます。
だからきっとこのドラム式も良いはずなのです(←また勝手に)。
青空も美しいですね。
こちらは8月終わりあたりから雨ばかりで今日久しぶりに青空でした。
洗濯機も青空も、なくてはならない有り難いものですね。
ツマ。
by 竹口要 (2016-10-06 23:50)
アフリカに行くと今でも川で選択している人を見かけますが
洗濯って重労働ですよね。
機械化されて良かったです。
洗剤もどんどん良くなってクリーニングに出さなくても何でも
家で洗えるようになってきているのも進歩なのかな~
by miffy (2016-10-06 23:54)
洗濯の機械、プリミティブな姿が良いですねえ。
この機械でも、以前よりはずっと便利になったのだろうなあ。
古い車も素敵だ!
by ナツパパ (2016-10-07 06:08)
此処興味深いな、 その時なら 私はどうしてたかなとか
想像と妄想の世界に、心が飛びそうですもの
私の母は、染色をしますから
うちで、しんしばりをして布の下地をしますよ
半日仕事、、でも楽しそうにしてますね
by engrid (2016-10-07 17:46)
→皆さま「洗濯日和な空の下」のお話にnice!やコメントをありがとうございました。我が家の洗濯機、ドラム式、結構すごい音がします^^;。静音設計なんてあまりこだわらないのかなぁ。
→ハリネズミさま
アンティークの洗濯バサミ、すごい、なんでも持ってらっしゃる♪ 洗濯機が壊れると大変ですよね、我が家もオランダで経験あります^^;。修理に来ても部品が今ないからと直らず、部品が来ても結局直らず、直ってないのに修理代取られ、クレームしたらブチ切れられて電話切られたという・・・。洗濯機は本当に暮らしの中で大事♪
→(。・_・。)2kさま
私もそんな昔からある商売だとは知らず、ビックリでした^^。日本の洗濯の歴史も古そうで、染物屋さんが洗濯屋さんみたいなことを兼ねてたりもしてたんですって。
→アールグレイさま
昔のものを単に展示してあるのではなく、ちゃんと使ってるところを見られるっていうのは、わかりやすいですよね^^。百聞は一見に如かず。解説を読んですぐにわからない私でも、見て分かるのは嬉しいです♪
→mituさま
機械で便利になって自由な時間を得た分、何か気付かないうちに失ってるものもあるんでしょうね^^;。そのバランスを考えてみるのも大事なのかも。子供の頃には二槽式の洗濯機があったけど、脱水してる間に次の洗い物もができるから、量が多い時は今の全自動より時間の節約可能でしたねぇ。
→ぴーすけ君さま
フランスの田舎、いいだろうな〜。パリに住んでた時はほとんどパリから出たことなくって^^;。のどかな感じは、列車の中から見た風景ぐらいだなぁ・・・。
→だいずさま
旅先でジーンズを手洗いしたことがありますが、すっごく大変でした^^;。絞るのとか。真夏とはいえ朝までに乾くのか、ドキドキ。旅先のコインランドリーは楽ちんで、乾燥まであっという間。 ありがたい発明ですよね、洗濯機♪
→めぎさま
オランダで住んだ家は三軒ともバスルームに洗濯機、ドイツ、スペイン、フランスで住んだとこはキッチンに洗濯機でしたよ^^。最初はキッチンに洗濯機ってすごく違和感ありました。ホースを差し込むところも不思議ですよね、高いところに排水するのって。オランダ、壁のコンセントも床から高い位置にあるんですよ・・・。
→竹口要さまのツマさま
二曹式の洗濯機、量が多い時は、全自動より時間短縮できますよね〜。脱水してる間に、次の洗濯物洗えるし♪ 我が家のドラム式の全自動洗濯機、乾燥もできる洗濯乾燥機なんですが、すすぎはどうなんだろう・・・^^;。洗ってる最中、中がどんな風なのか見えるというのが、私のドラム式の好きなとこです^^。
→miffyさま
手で洗濯するのは大変ですよね・・・全自動洗濯機の便利さを知ってしまった今、そこまでは完全に戻れない感じです^^;。日本の洗剤は除菌もできるし、すごく落ちるし、素晴らしい品質♪ 家で洗えるものも、増えてきましたよね〜。
→ナツパパさま
写真のような大型のドラム式だと、軽く布団や毛布も丸洗いできそうですよね^^。私はふんわり柔軟剤の効いたベッドシーツ類にしてますが、母はパリッと糊のきいた仕上げでした。なんだか懐かしい。古い車もおしゃれな感じ、これの荷台には、石炭の入った樽がのっけてありました♪
→engridさま
昔のことを知るというのは今の暮らしを見直すきっかけにもなりますね^^。お母さま、染色をなさってるんですね。しんしばり、目の前で見られるなんて♪
by Inatimy (2016-10-10 18:20)