ゴージャスの中のシンプル [ウィーン 2014 冬]
角の丸みが優しい。
直線と曲線、ほどよい混ざり具合が心地いいのかも。
2014年12月に行ったオーストリア旅のお話。 ウィーンでの2日目の続き。
小路のクリスマス・マーケット、フォルクス劇場、ライムントの像、ギリシャ風な国会議事堂、
ウィーン市庁舎の公園と広場のクリスマスマーケットと進み、カフェ・ツェントラルで昼食。
ミヒャエル教会で宙に浮いた天使に会い、教会横の小さな中庭、スタルブルクの大きな中庭を眺め、
街角でアウグスティナー教会の塔を見上げた後・・・
・・・『野うさぎ』に会いに、美術館のAlbertina アルベルティーナへ行った。
ドイツの画家 Albrecht Dürer アルブレヒト・デューラー (1471-1528) の作品、
"Der Feldhase" 1502。
私は、この野うさぎが好きだ。
ウィーンのクリスマス・マーケットの旅の提案があった時に、真っ先に思い浮かんだ。
ポストカードも、マグネットも、ミラーも持ってるけれど、実物を見たのは初めてだった。
Study and Gold Cabinet 書斎と金の小部屋とあったところ。 写真の左奥が金の小部屋かな。
右の肖像画の女性は、Maria Christina マリア・クリスティーナ(1742-1798)。
彼女の夫はAlbert Casimir, Duke of Teschen テッシェン公アルベルト・アジミール(1738-1822)で、
美術館アルベルティーナの創始者になった人。
アルベルティーナの建物は元宮殿で、ふたりの住まいだったそうな。
ちなみに、マリア・クリスティーナの母はマリア・テレジアだから、マリー・マントワネットは妹になる。
と、こんな豪華なお部屋が続く室内にコレクションの素描や版画が展示されてるのだった。
その中で、気になったものを挙げると・・・
ヴェネツィアの画家 Canaletto カナレット(1697- 1768) の
"Ausblick durch eine Barocke Säulenhalle" 1760-1768
『バロックの柱廊を通して見る』みたいなタイトルだと思う。
本名は、Giovanni Antonio Canal ジョヴァンニ・アントーニオ・カナール。
カナレットの絵画はパリのルーヴル美術館や、
2013年のマイヨール美術館での「ヴェネツィアのカナレット」展でいろいろ観たことがある。
波の描き方が適当っぽかったりして、ある意味、気になる画家だった。
スイスの画家 Peter Birmann ペーター・ビルマン(1758-1844)の
"Die Teufelsbrucke am St. Gotthard-Pass" c.1800 『聖ゴッタルド峠の魔橋』ってところかな。
この峠はスイスにあって、橋にまつわる伝説があるそうな。
渓谷の激流で溺死したり、峠越えが困難ゆえ、悪魔に橋を架けてとお願いしたら、
引き受けるけど最初に渡ったものを生贄としてもらうからね、と約束をさせられる。
で、依頼主、完成した時に、ヤギを最初に渡らせた。
これに、騙されたと悪魔が怒り、橋にむかって岩を投げつけようとしたけど、
岩に十字架が書かれ、つかめなかった・・ということらしい。
今もその岩が残るそうな。 絵にある橋もまだあって、その上に新しい橋も架けられてるよう。
ドイツの画家 Caspar David Friedrich カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(1774-1840) の
"Blick auf Arkona mit aufgehendem Mond" c.1805/1806
日本語では『月の昇るアルコナ岬からの眺望』や『アルコナの眺めと昇る月』となるよう。
アルコナは、ドイツ北部、バルト海に浮かぶリューゲン島にある岬らしい。
その島でも北の端にあるとか。
この画家の絵は、2008年にエルミタージュ美術館アムステルダム別館で開催してた展覧会、
「カスパー・デイビッド・フリードリッヒとドイツロマン派風景画」で知った。
部屋の片隅にあるストーブも気になるところ。 背が高い。 金色の装飾が壁と調和してる。
この宮殿が使われてた頃、日本は江戸時代。 お城は、暖房ってどうだったんだろう。
やっぱり、火鉢や手あぶりかな。 部屋全体を暖めるというものはなかったのかも。
これは、Das Wedgwoodkabinett・・・ウェッジウッドの小部屋にあった壁の一つ。
ブルーに白が浮かび上がるレリーフは、英国の陶器メーカー、ウェッジウッド社のもののよう。
土、水、空気、火と4つの要素をテーマに壁にパネルが。
元は、テッシェン公アルベルト・アジミールとその妻マリア・クリスティーナがブリュッセルに持ってた城、
現在のラーケン王宮の敷地内にあったTemple du Soleil (意味は、太陽の神殿)にあったらしい。
どうして、撮ったのかというと、レリーフの下のほうにある・・・
・・・水の描写が見事で。 蛇の噴水口から弧を描く水の動き、なんという透明感なんだろう。
じっと眺めてしまいそうになるところを、部屋を抜けて、さらに、先に進む。
オーストリアの画家で現在のチェコのプラハで活躍した Karl Postl カール・ポストゥル(1769-1818)の
"Blick auf Prag"1800 『プラハの眺め』
タイトルを見なくとも、パッと風景を見ただけで、プラハのカレル橋あたりだと分かった。
両端に橋塔が見える。 橋の欄干には聖人像が立っているのだった。 全部で30あるんだったかな。
橋の向こうの小高いところには、プラハ城と聖ヴィート大聖堂。
大聖堂にはまだ、ミュシャのステンドグラスがなかった頃だな。
200年あまり前も、今とほとんど変わりない。
この後、開催中だった企画展をさらっと観た。 こちらは撮影禁止。
"Miro" ミロ展は終わってるけど、
"Monet to Picasso" モネからピカソ展は、2017年3月10日まで開催中。
アルベルティーナから見たWiener Staatsoper ウィーン国立オペラ座。
15時過ぎに美術館に入って、出てきたのが17時過ぎ。
軽く流して観たつもりなのに、思ったより時間がかかった。
さて、今夜は何食べよう・・・と、暗くなった街へと歩き出す。
でも、朝から歩き続けて足がクタクタ・・・。
野うさぎ、すごく見事ですよね。
白に金の装飾のストーブだなんて、優雅なデザインですねぇ☆
うっかり、熱いことを忘れそうです。。
by ネム (2015-08-07 23:40)
リアルな描写の野うさぎ、いまにもこちらに向かってぴょんと
飛び出してきそう^^。
ポストカードにマグネット、ミラーも持ってらっしゃるという大好きな絵、
実物を見られたときには感動されたでしょうね。
レリーフのはねた水の飛沫、本当にみごとな描写!
by ハリネズミ (2015-08-08 09:00)
昨日の晩、食事に行ったお店のシェフが云ってました。「日本人には“かわいいうさぎちゃん”なんですが、ヨーロッパの人たちからすると、先ずは食材なんですよね~」って。はい、ワタクシ、食べて来ちゃいましたです(^^ゞ。
いなちゃん、このうさぎに対してははオオカミ目線(笑)じゃないの~?。
デューラーは狩猟の獲物として描いたのかな?。それとも、愛らしい動物とし描いたのかな?。ちょっとそのへん、知りたいね(^^。
by yk2 (2015-08-08 11:25)
有名なデューラーの「野うさぎ」をInatimyさんがお好きなこと、知ってたけど、とうとうウィーンで会えたんですね!これ、保存上の理由から、普段、公開してない、ってきいています。描写力がすごくて、生きてるかのようだ、って言われてるから、私も、いつか見たいなって思ってるんですが。。
ヨーロッパの美術館では、カナレットに出会うことが多いですね。ヴェニスの海じゃない景色の絵は珍しいですね。
「聖ゴッタルド峠の魔橋」、実際に渡ってる人たちが描きこまれてるので、峡谷の大きさが明確になりますね。橋にはそんなお話があったんですね。フリードリヒは理知的な感じのする冷たさと謎めいた雰囲気に惹かれて好きです。人間がいる時はいつも後ろ向きなんですよね。シューベルトの「冬の旅」のCDジャケにもフリードリヒの「雲海の上の旅人」が使われています。もちろん後ろ向き。
プラハの風景は、Inatimyさんにとっては、懐かしさいっぱいだったでしょうね。
by TaekoLovesParis (2015-08-08 13:20)
ゴージャスな中のシンプル
素敵です(^^)
by (。・_・。)2k (2015-08-08 13:27)
ストーブ、すごご~~い。。。ピカピカゴージャス♪
by ぴーすけ君 (2015-08-08 15:31)
オペラ座~!!
あと、私もやっぱりストーブにビックリです。
説明がなければわからない~!
ちょっと憧れます(^O^)/
ツマ。
by kaname (2015-08-08 17:51)
うさぎさん、今にも動き出しそう。
お耳が長~いですね^^
なんてゴージャスなストーブ!
しかも上についてる壺みたいなの・・不思議です。
by akko (2015-08-08 17:56)
ストーブが気になります。
燃料は何だろう、 煙突も無いし、本体の後ろに排気口があるのかな。
暖房機器もインテリアとして考えて作られていてこだわりを感じます。
by ami (2015-08-08 20:02)
ストーブ、丸くて華やかで かわいい♪
美術品など 美しいものを見ると
心も豊かになりますよね(*´ω`*)
by だいず (2015-08-08 20:23)
ゆっくり歩いて観賞できる、幸せです
思うがままに絵の前に佇むことができるって、ほんと至福ですもの
by engrid (2015-08-09 07:33)
この手のストーブ、ザルツブルクでもいっぱい見てきました♪
そうかあ、野ウサギさん、ここにいたのですね。
私にとってウィーンにある絵と言えば、ブリューゲルのバベルの塔。
何度も何度もその絵の前へ足を運びました。
by めぎ (2015-08-10 01:51)
使うのがもったいないストーブです。
by luces (2015-08-10 08:37)
美術館いいな・・・楽しそう。
ついつい時間って経っているものですよね^^;
絵画でも、ある程度までは撮影OKなんですね。
うさぎさんがリアル。 ストーブは別の物のよう。
by MIKUKO. (2015-08-10 22:17)
デューラーの野うさぎ、初めて実物ご覧になったのですね。
想像していたのと比べていかがでしたか?
実際に見ると全然雰囲気が違っていたりしてガッカリする場合と
想像以上に素晴らしくて感激する場合がありますけど。
ウィーンの美術館は宮殿だった所が多いので装飾も素晴らしくて
目移りしちゃいますよね。
by miffy (2015-08-10 23:10)
ゴッタルド峠の橋が見たくてスイスで寄り道しましたっけ。
周囲が断崖で、その中を滝のような水が流れていて、けっこうな迫力でした。
よくもまあ、こういうところに橋を作ったものです。
今は高速道路が走っていたり鉄道が通っていたり...わたしは鉄道から見ました。
by ナツパパ (2015-08-11 10:01)
ウェッジウッド社のレリーフの水の描写、ホントに素晴らしいですねー^^
見ているだけでも涼やか~。
いま日本は暑いので、「オアシス見っけー!」のような気分です(笑)。
by hatsu (2015-08-12 20:39)
→皆さま「ゴージャスの中のシンプル」のお話にnice!やコメントをありがとうございました。お休みから戻って普段の生活に戻りました。お返事が遅くなってしまって申し訳ないです。早く冬の旅のお話も終わらせないといけないな・・・^^;。
→ネムさま
この長い耳、ふわふわの毛並みがいいですよね〜。やっと生で観られました^^。昔の欧州のタイルストーブもシンプルで好きなんですが、こんなゴージャスのも目の保養♪
→ハリネズミさま
野うさぎ目当てに入った美術館、館内案内をもらうのも忘れ、どこにあるのかわからず適当に向かったら、真っ先に目に飛び込んだのが、ちょうど野うさぎの絵♪ 導かれたかのようでした^^。 レリーフの水、飛び散った水滴もすごいでしょ〜。
→yk2さま
ウサギ、日本のレストランでも食べられるんですね〜♪ どんな調理方法だったのか知ら^^。デューラーは図鑑っぽい視線かも、動物学的な。私の場合、愛らしさ半分、美味しそう半分かな^^;。鶏よりも小さくて可愛いし、毎日新鮮な卵を食べたいと、子供の頃、ウズラ2羽飼ってたことも・・・。この夏の旅でも、可愛い野生動物食べてきましたよ〜。
→taekoLovesParisさま
え、「野うさぎ」普段は公開されてないんですか?だとしたら、すごく運が良かったです^^。クリスマス前の時期だったからかしら。ふさふさの毛の一本一本がすごく綺麗で、目の前に立った幸せをじんわりと感じました。でも、もっと大きな絵かと思ってたら意外とこじんまりと^^;。カナレット、私もベニスの波のある風景画しか見てなかったので珍しくて撮影。聖ゴッタルド峠を描いた絵、以前もどこかで他の画家さんが描いたのを見た覚えが。風景に人が入ると、その規模が分かりやすくていいですよね^^。フリードリヒの「雲海の上の旅人」はまだ実物見たことがなく、どこにあるのかしらと思ったらドイツのハンブルク美術館。いつか機会があるかしら^^。プラハ、何度も歩いたカレル橋付近、絵を見ていろんなことが浮かんできました〜。
→(。・_・。)2kさま
ゴージャスな中のシンプル、シンプルの中のゴージャス・・・メリハリって大事ですよね〜お互いがお互いを引き立てて♪
→ぴーすけ君さま
現代では機能重視で、低価格で作れるよう見た目は後回しだから、こういう装飾って、すごいですよね^^。ゴージャスな気分。
→kanameさまのツマさま
昔のストーブって、そのフォルムが様々で、シンプルなタイルストーブも素敵だし、装飾こてこてのもゴージャスだし♪実際使うとどうなのかは分からないけど、見るには目の保養で^^。
→akkoさま
動物好きにはたまらないです、この野うさぎ♪ ふわふわの毛の表現がまたすごくって^^。ストーブ、ゴージャスですよね。なんのためについてるのか分からないものをあえて装飾にという視点、リッチな人の心って私とはまた別の角度から見てて、わぁ〜っと印象的^^。
→amiさま
燃料はなんでしょうね、薪なのかしら。ひょっとしたら背後にパイプがあって壁につなだってて外に煙を排出できるのかも。機能と美しさを備えた一品、部屋の内装に合うように作られてるのもこだわりですよね^^。
→だいずさま
今の私の暮らしは引越しのたびに必要になって買い集めたIKEA製品だらけなので、全くテイストの異なる生活の品って、とても印象的で、ゴージャス気分も味わえて面白く^^。
→engridさま
自由に使える時間って本当に豊かなことですよね^^。気の向くままに街を歩いて、好きな絵の前に立てたこと、いい思い出になりました♪ ツアーだと見学に時間制限があるからか駆け足で見ていかれる団体さんもいらっしゃいますものね。
→めぎさま
ザルツブルクも裕福そうなストーブがたくさんありそう^^。目の保養です。昔、アルプスの少女ハイジで、冬の間に村に降りてきて住んでた家のストーブが子供ながらにとっても印象的だったんですよ。それ以来、ストーブは感心のある対象に♪ブリューゲルの「バベルの塔」は、美術史美術館ですね^^。そっちも行ってきました〜。すごい絵の数で目がぐるぐるでしたが・・・。
→lucesさま
あまりにも立派な装飾で、大事に大事に使わないと・・・って思いますよね^^。
→MIKUKO.さま
欧州の美術館は、フラッシュ無しなら撮影可のところが多いです。企画展など特別なものはダメなのが。ミュージアムに入るたび、撮影可かどうかパンフでチェックしたり係りの人に確認したり^^。私が気にいる作品って、ポストカードで売ってるのが滅多になくって。ストーブ、私よりも大きくて、すごく温まりそうな感じでしたよ〜。
→miffyさま
デューラーの野うさぎ、初めて実物を見ました^^。思っていたより絵が小さかった感が。でもフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」ほとびっくりするサイズじゃなかったかな。フェルメールのは気がつかず通り過ぎてましたから^^;。ミロ展もなかなか興味深い絵が多くて、野うさぎを一目だけでも、と行った美術館でしたが十分楽しめました♪
→ナツパパさま
すごい、実際に聖ゴッタルド峠まで行かれたんですね〜〜。絵でも人の大きさからすると迫力満点ですもの、実際の峠の様子はスケールの大きな風景だったでしょうね^^。雪解け水で川が増水したり、険しい道を橋の材料を運んだり、絵を見ながらあれこれ考え、建設はとっても大変だっただろうなと想像。それをすんなり引き受ける悪魔、パワーがすごいですよね^^;。
→hatsuさま
ウェッジウッドのレリーフも素晴らしいものだったんですが、その下の水の描写があまりにリアルで^^。日本は残暑厳しいでしょうねぇ・・・9月いっぱい暑さは続くかしら。こちら、急に肌寒く、最高で17℃です・・・。でもまた上がりそう。
by Inatimy (2015-08-17 20:17)
オペラ座が美しい!!!
いいね、この風景。
by カエル (2015-08-20 22:10)
→カエルさま
ライトアプされたオペラ座、綺麗でしょ♪ パリのオペラ座に劣らず、ウィーンのオペラ座も見事な建物なのでした^^。
by Inatimy (2015-08-24 22:29)